執事と共にホワイトデーを。
長いこと主がいないからである、ということが容易に想像できる。

春樹は、無意識に恵理夜の手の熱を思い出していた。

しかし、これだけ冷えてしまっては恵理夜に手を触れるのも憚られるだろう。


「……薬を、忘れてしまったか」


普段は、自分が口うるさく薬についていっているというのに。


「叱られてしまうな」


春樹は、かすかに苦笑を浮かべた。

――そんな時ではないだろうに。
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