よゐしこのゆめ。
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「え?」


「あっ……」



男の人の声を聞いて、ベンチに座っていた女の人が顔を上げた。


長いまっすぐの黒髪が、その瞬間にさらっと揺れる。



「ここに人がいるところを見るのは初めてだよ」


「わたしも。いつも自分だけだから、つい好きなことしちゃって」



これはたぶん、あの公園の藤のある場所。


綺麗な青空と周りの木の緑の中に、薄紫がほわっと広がっていた。



藤が咲いてるってことは、これは夢なのかな?



今はまだ3月。


藤が咲くにはちょっと早い……



「編み物?それ、手袋だよね?」

  
「そうなの。
本当は冬にって思って作ってたんだけど……チャンスを逃しちゃって」


「誰かへのプレゼントだったりして」


「するどいなぁ。うん、最初はそのつもりだった。でも、その人にはふられちゃったから」
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