よゐしこのゆめ。
「さっきと言ってることが違う……」



あの家には、喧嘩をしていたパパとママのいる家には……



薄紫のラブレターを隠し持ってるママの顔を直視できない今は……まだ家に帰りたくない。


どうやって、二人を見れば良いのかわからない。



「大丈夫だよ。こんな格好じゃ寒いだろ」


「あんたに言われたくない」


「俺は平気なの。名俳優だから!てか、フジって呼べよ」



彼はそう言うと、わたしの頭に軽く拳をぶつけた。



「良いか?俺は明日からもずっとここにいるから。今日みたいに辛くなったら、いつでも来いよ」


「え、わたしが辛いって気付いてたの……?」



びっくりして目を見開くと、彼は大きく息を吐いた。



「当たり前だろ?あんなに泣きそうな顔してここへ来て、しかもいきなり気絶するし……。何があったかわかんねぇけど、たぶん俺は、歩巳が聞いて喜ぶ話も聞かせられるから」



彼の右手が、ぽんっとわたしの頭に乗った。



「だからとりあえず元気出して、今日は家に帰れ」



軽い重みのせいで、少し上目使いで彼を見る。



相変わらずその笑顔と髪はキラキラとしていて、わたしは何故か安心して、頷いた。

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