よゐしこのゆめ。
昨日、あれからどうやって家に帰ったのかはよく覚えてない。
でも、帰った瞬間にママがわたしに抱きついてきて
泣き出したことは何となく覚えてる。
だけど、何だかいろいろあって疲れてて……
わたしは結局、そのまますぐに寝た気がする。
次の日起きるともうお昼で
仕事に行ったパパとママは、もう家にいなかった。
結局、昨日の喧嘩がおさまったのかどうかもわからない。
ただ、昨日ママの姿は見たけど、パパの姿を見てない気がして
それが何となく気になった。
キッチンのテーブルの上には、3つのお揃いのティーカップ。
白地に藤色の細いラインがたくさん入ったカップ。
無数のラインは、交差したり、くるっと回転したりして、カップを飾っている。
それを見たら何だかおかしくなってきて……。
誰もいない家に、わたしの乾いた笑い声が響いた。
「フジの所、行ってみようかな……」
別に、フジがいなくても良い。
あそこにいれば、たぶん気分が穏やかになれる気がするから、行くだけ。
わたしは、部屋に戻ってお気に入りの小説と最低限の荷物を持つと、家を出た。