よゐしこのゆめ。
風が一度、大きくがさっと鳴った。
それと同時に、いつも夕方の同じ時間に響くチャイムが聞こえる。
「えっ……もうこんな時間!?」
「あぁ、本当だ。歩巳といるのが楽しくて気付かなかった」
さらっとそう言ったフジは、両手を上にぐっと伸ばした。
袖がするっと下りて、筋肉のラインがすっと通る。
どちらかと言うと可愛らしい顔をしているフジだけど
こういう姿を見ると、男の子なんだって実感させられる。
「まだ帰らなくて平気?」
「あっ!塾あるの忘れてた!」
「え?間に合う?」
「うん。あと2時間くらいあるし……。もう帰らなきゃだけどね」
そう言うと、わたしはベンチを立った。
お昼ご飯を買う時に1回だけ歩いたけど、それ以外はずっと座ってたから
さすがに体ががちがちだ。
「じゃ、今日はここまでだな。楽しかったよ、歩巳が来てくれて」
「わたしも……ありがとう」