よゐしこのゆめ。
Ⅴ,虹色で染色。
「あゆー」
「え?麻奈?何でここにいるの?」
塾の授業の前。
いきなり肩を叩かれて見上げると、そこには麻奈がいた。
「うん。あたしも今日からここに通うことになったの。あゆがいるなら安心だって言われて」
そう言って苦笑いをする麻奈に、なるほど、と返事をする。
「そんなにあたしが危なっかしいのかね、ウチの親は……。あゆよりはよっぽどマシだと思うんだけど」
ぼずっと隣の机に荷物を置いた麻奈に、今度はわたしが苦笑いを返した。
わたしに反論する資格がないことは、残念なことに、わたしが一番良くわかってる。
「でも、麻奈って塾通わなくても頭良いじゃん」
「うーん……まぁでも、通わせとけば安心だからじゃない?ウチの親的にも。あたしもそーゆーとこはちょっとあるし」
そういうものなのかな……?
わたしはとりあえず、筆箱とテキストを出して授業の準備をした。
そんなわたしを見て、麻奈が自分の方を向くように、視界で手を揺らす。
「てことで、明日遊ばない?」
「は?」
「10時に駅集合ね。買い物して、カラオケ行こっ!」
「え、ちょっ……!」
わたしに反論する隙を与えないみたいに、先生が教室に入ってきて授業が始まった。
少しフジのことは気になるけど……まぁ、良いよね。
そう切り替えて、わたしは黒板に集中した。