よゐしこのゆめ。
  


「あ、麻奈!ごめんね、待たせて」


「いーよ!あゆの方が遅いのはいつものことだし」



にやりと笑った麻奈は、そのまま駅の近くにあるショッピングモールに向かって歩き出した。



わたし達くらいの年齢からママ達世代の服まで、男女問わず幅広く扱ってるこの店。


平日だけど、春休みだからか、中に入ると人も結構多かった。



「何か買いたいものでもあるの?」


「春服を適当に!せっかくの春休みなのに、着る物全然なくってさー」


「なるほどね」



今日も十分可愛い格好してると思うんだけどな……



薄いグレーのワンピースに、ピンクの合皮のジャケット。

私には、ピンクのジャケットなんて一生着れない気がする……。



「あゆもさ、何かもっと春らしい格好すれば良いじゃん。春なのに真っ黒って……」



そう言われて、自分の格好を見直す。


黒と白のボーダーのカットソー。

ふわふわとした、黒のミニスカート。


ベルトとか、アクセサリーとかを差し引いたら、確かにわたしの格好は春らしくない。



しかも、こんな服装の日に限って、鞄まで黒いし……。



「今日はあたしがちゃんと選んであげるから、明るい服買いなさい?」



そう言って、麻奈はわたしの肩を叩いてくる。



お姉さんがいたらこんな感じなのかな?


そんなことを考えながら、わたしは麻奈の後に続いた。

   
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