よゐしこのゆめ。
「またぼーっとして聞いてなかったの?」


「だって、あの桜の絵がすごく綺麗だったから……」


「え?」



慌てて言ったわたしの言葉に、店員さんが反応した。



「この店にある絵、私が描いたんです。近くの美大に通ってるんですけど、店長さんがあの絵を気に入って下さって……。
絵と一緒に、私も置いてもらってるの」



にっこりと微笑む店員さんのふんわりした雰囲気が羨ましい。



「すごいですね!どの絵も可愛くて、お姉さんの雰囲気にぴったり!」


「そう言ってもらえると、嬉しいです」



麻奈の言葉にふわふわと微笑む店員さん。


何となく、この温かさはフジに似てる気がする……――――



そんなことを考えてたら、コンコンと窓を叩く音が聞こえた。


びっくりして見たわたし達に、背の高い男の人が微笑む。


店員さんに視線を移すと、少し呆れたような、嬉しそうな顔をしてた。



「もしかして、お姉さんの彼氏?」



上目使いで聞く麻奈に、店員さんは照れたように微笑んだ。


店内に入ってきた彼を、そっと見上げる。

顔も格好良いけど、服もお洒落だ。



「バイト終わるまで、ここで待ってるから」


「ありがとう。でも、接客中に話しかけないでよ!」


「でも、何か親しげに話してただろ?」


「そうだけど……」



不満そうな店員さんを見てにっこりと笑うと、彼は空いてる席に足を進めた。



「あのっ……!」
< 30 / 50 >

この作品をシェア

pagetop