よゐしこのゆめ。
思わずがたっと椅子を揺らして立ち上がると、3人がびっくりしてわたしを見た。



「どうかした?」



男の人が、不思議そうに首を傾げる。



「あのっ!その服、どんなお店で買ってるんですか?」


「え?」



この際、恥なんて知らない。


パパ譲りの行動力と、ママ譲りの強気な考え方は、こんな時に発揮されるのかも……。



「あの……格好良いな、って。わたしの……弟、服のセンスがなくて……お兄さんみたいに、格好良くストール使えちゃうようになって欲しくて。その……」



あわあわと話すわたしに、男の人は店員さんと顔を見合わせた。


呆れたかな?

そう思って不安になったけど、2人はにっこりと笑った。


「俺の服で良いのかはわかんないけど……」



背も高い。

髪も黒い。

すっと通った目と鼻筋も、アイツには似てない。


でも、この服装は絶対に似合うと思う。



それに、さっき見つけたストールともぴったりなはず……。



必死さが伝わったのか、彼はよく買い物をする場所や値段なんかを丁寧に説明してくれた。



最後に「頑張れよ」って微笑まれたのは、たぶん気のせいじゃなかったと思う。



そして、働かない頭に鞭を打ちながら、結局麻奈と同じランチのセットを頼んだ。



「……あゆちゃん?いつから“弟”ができたのか、説明してくれるよね?」



せめて“いとこ”って言うべきだった……!


睨むような視線を送る麻奈に苦笑いを返しながら
わたしは洋服を一式プレゼントしたい人がいることを話した。
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