よゐしこのゆめ。

「フジー!いる?」



麻奈と別れた後にはもう、時計は夕食を食べたくなる時間を指していた。



「……遅い!何時だと思ってんだよ!」



どこにいるのかと思って見上げると、フジは藤の蔦うアーチの上に寝転んでるみたいだった。



「ごめん!でも、見て欲しいものがあるの!下りてきて!」



フジは、不機嫌そうな顔をしながら、静かに隣に降りてきた。


ベンチに座るように促して、わたしも隣に座る。



「これあげるっ!」



そう言って、フジに大きめの白い紙袋を差し出した。



「何?見ていいの?」



こくっと頷くと、フジは袋の中身を取り出し始めた。



濃い色のジーンズ。

薄いグレーのカットソー。

黒のベルトと襟や袖にカラフルな折り返し模様の入った黒のジャケット。


それに、薄紫を基調に、何種類かの紫で模様の入ったストール。


全てを机の上に並べたフジは、不思議そうな顔で言った。



「これ……、俺に?」



軽くわたしを覗き込むフジに、また小さく頭を下げた。


麻奈と買い物をした時に見つけたのはこのストール。

気になったのは、もちろん色だ。


見た瞬間にフジの顔が浮かんできて……

フジの甘い顔にぴったりだと思った。



でも、ストールなんてお洒落なもの、どう使えば良いのかわからない。

だからわたしは、そのまま通り過ぎた。



でも、あの店員さんの彼に会って、思い直した。



「でも、こんなの貰っても平気なわけ?」
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