よゐしこのゆめ。
「良いの!」



そう言ってうつむくと、フジは笑った。


少し嬉しそうに見えるのは気のせいかな……?



女の子の服と違って、値の張る男の子の服。


彼氏さんのアドバイスで、ジーンズやカットソーは安く買える店に入ったけど
それでもお財布の中は残念な空気を漂わせてる。



それもあってか、フジがこうやって喜んでくれると、素直に嬉しい。



「着ても良いか?」


「うん、是非。よろしければ……」



どうぞ、と掌でそれを促す。フジは軽く笑うと、「じゃあ、あっち向いてて」と言った。



ここで着替えるのか、コイツ……―――



そう心の中で呟きながら、わたしはフジに背を向けた。



「何でこれ、用意してくれたの?」


「……気分かな。いつもお世話になってるお礼。わたしが辛い時も、何も聞かずに話し相手になってくれるし。本当に感謝してるから……」



ベンチから投げ出した足を揺らす。


ふらふらさせた膝下をぼーっと見つめていると、後ろからふわっと、何かに包まれた。



「ありがとな」


「……っ!?み、耳元で囁かないで!」



首筋に当たる、ふさふさとした感覚がくすぐったい。


回された腕は、予想以上にかちっとしてて……
やっぱりフジは男の子なんだ、なんて妙に冷静に考える頭に気付いた。



それに、何か懐かしい気がするのは気のせい……?


そう思った瞬間、前に夢で見たフジの下で話す男女の姿がふわっと浮かんだ。



でも、今はそれよりも……
 
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