よゐしこのゆめ。
笑いながら言うと、フジは私の頬を両側からつかんだ。



そのまま、びよっと左右に引っ張られる。


わたしの頬、伸縮性は良くないんだけど……。



「お前の名前は、愛されてる証拠だ。それに、“フジ”はお前の親父さんだろ?
だから、母親は浮気もしてない。それどころか、羨ましいくらいに親父さん一筋だ」



真剣な表情でそう言われても、この状況じゃ返事もできない。



「だから、喧嘩の理由をちゃんと2人から聞き出して、ちゃんと2人を仲直りさせろよ。
俺の花の下で、フジの名前を貰った歩巳なら、2人を取り持つことだってできるさ」



わたしは、小さく頷いた。



もしかしたらフジは、わたしが口応えしないように頬をつまんだのかもしれない。



「今度ここに来る時は、2人の仲を戻した後だ。それまでここに来るのは禁止」



眉間にしわを寄せると、フジは困ったように笑った。



「次来る時は、絶対に笑顔で!約束だぞ?」



そう言うと、いきなり大きくなったフジの顔。



近すぎて、顔が固定されてて、視線をそらすこともできない。



あわあわしながらわたしが小さく首を振ると

フジはいつもの、大きな笑顔を見せてくれた。
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