よゐしこのゆめ。
Ⅶ,浅紫の甘美。
「パパ、ママ、話があるの」
フジと話した次の日の夜。
3人そろった夕食の席で、わたしはそう切り出した。
わたしの隣には、ママ。
向かい側には、パパ。
黙々と箸を動かしてた手を止めて、2人がわたしの方を見た。
「わたしが春休みに入った辺りから喧嘩してるよね?話してるとこもあんまり見てないし、ママはパパのお弁当作らなくなったし、……。
2人に聞いても原因も教えてくれないし。そろそろ、わたしも限界だよ。この家の空気じゃ、生活しにくい」
我ながら、ひどいことを言ってると思う。
でも、他に言葉が思い浮かばないわたしは、そのまま続けた。
「せめて、原因だけでも教えてくれない?内容によっては、わたしだって解決に協力できるかもしれないし。このまま3人でご飯食べてたって、美味しくないよ……」
言葉を震い出して、ママを見る。
視線をお皿に落としたママは、口を開こうとしてくれない。
困ってパパに視線を移すと、パパははぁ、っと溜息をついた。
「原因な……。前に歩巳に聞かれた時は、恥ずかしくて言えなかったんだよ。もう話しても良いだろ、ママも」
「そうね。……歩巳にこんなにも心配されちゃうなんて。少し大人げなかったかも」
そう言うと、ママは持っていた箸を置いて、体をわたしに向けた。
「あのね、今月はママ達が、初めて出会ってから20年経った記念日なの」
「そう、なの?」
「あぁ。小さい頃みんなでよく行った藤があるだろ?あそこでママに会ったんだよ。
それで、いつもは何もしないけど、せっかくの20周年だから記念に何かを買おうってことになって……」
「歩巳が塾に行ってる間にいろいろ見て考えてたんだけど、なかなか決まらなかったの。そんな時、ちょうど、歩巳の終業式の日かな?パパが、買ってきちゃったの」
ママはすっと立ち上がって、食器棚の1番下の棚を開けた。
取り出した薄紫の箱を持って、ママがテーブルに戻って来る。
「これって……」