よゐしこのゆめ。


「てか、さっきどこ見てたの?」


「さっきって?」


「ホームルームの時だよ!ずっと外見てたでしょ。心ここにあらずって感じ」



箒……

いや、箒じゃないな……何これ。


とりあえず、箒とブラシとモップを足して3で割ったような道具を使ってゴミを集めていたら、麻奈がわたしに聞いてきた。


そう言いながら、ちりとりを出してくれる辺りが

麻奈の良いところだなって思う。



「あぁ、公園だよ。あるでしょ」


「あるね。教室3階だから、目立つし。でも、今だと桜も咲いてないし、何か殺風景な感じだよね」


「確かに。やっぱ、あの公園って言えば桜だよね」


「うん。違うの?」



不思議そうにこっちを見る麻奈に、わたしは軽く笑いを見せた。



「わたし的には藤なんだよね」


「藤?
それは意外だよ。確かにあったような、でも、なかったような……」



そう言うと、麻奈は苦笑いをした。


それは、すごく正直な反応だと思う。



あの公園には、桜はたくさんある。

でも、藤があるのは一ヶ所だけ。


公園の西の端にある、周りをよくわからない木で囲まれた小さな空間。


藤の下にテーブル一つとベンチはあるけど

近くに遊ぶ場所も少ないその位置には、たいして人も寄り付かない。



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