よゐしこのゆめ。
「端っこにひっそりとあるだけだから、覚えてないのが普通かも。
わたしは、小さい頃によく家族で行ったから印象的なだけ。パパとママが好きな場所なんだって」


「なるほど。きっと、2人の思い出の場所なんじゃない?聞いたことある?」


「そんなこと考えなかったから、聞いたことないなー」



集め終わったゴミを、麻奈がゴミ箱の方へ運ぶ。


その後ろ姿を眺めながら、私は掃除道具を入れるロッカーに向かった。

他の場所からも、何人かが道具を片づけに来てる。



「そういえば、一昨日あゆのお母さんとお父さん見たよー。お昼すぎかな?駅前のケーキ屋で。
本当に仲良いよね。2人とも若いし、何か付き合いたてのカップルみたいだったよー」



確か、一昨日はわたしが塾に行ってる間に、2人で買い物に行っていたんだっけ?



そんなことは日常茶飯事だから、何も気にしてなかった。

少し恥ずかしいと思ったこともあるけど、そんな2人はやっぱりわたしの自慢だったし、理想だと思う。



でも、それでも何か引っかかる気がするのは、今朝の夢のせい……?



普段はパパとあんなにも楽しそうに笑うママが……―――――



「あゆー?またぼーっとして!次は体育館でしょ?行くよ!」


「う、うん!」



わたしは、持っていた掃除道具を置いて

さっきまでのもやもやと一緒に、ロッカーの扉をばんっと閉めた。


 


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