AL†CE!
「いまっ…何分!?」
走りながら大地が聞いた。
「よんじゅ…3!」
佐柚が左手首にはめた腕時計の時刻を読むと、大地は速度を速めた。
「俺やばいわ、悪いおいていく」
「あっ、待ってよ大地!」
______
キーンコーンカーンコーン…
予鈴が鳴った。
「よっしゃーっ…間に合った~」
門を通って大地は小さくガッツポーズした。
しかし直後、脚がひどくふらつき、その場にしゃがみこんでしまった。
「あ゙ー…やべぇ」
熱が上がってきているのだろうか。
「何してんの、ほら保健室いくよ!」
うしろから、息をきらした声がした。
同時に、ぐい、と腕を引かれ、立たされる。
「おわっ、有末、速かったな」
華奢な腕の力とは考えられない強い力だった。
「慣れてんの」
佐柚は大地より先に歩き出す。
大地は、佐柚の背中に、佐柚を駅で見たときのことを思い出していた。
複数の大人の男を相手に対等の殴り合いをしていた。
髪の色も、化粧も、学校生活とは違った派手なものだった。
一体、佐柚は夜の街でなんのバイトをしているのだろう。
『慣れてんの』
…何に?
佐柚の体力や握力は人並みではないだろう。
どんな生活をしているのだろうか。
大地は、学校一の美人と呼ばれる佐柚のことを、もっと知りたいと、思った。