AL†CE!
~Rabitt of Grass~

はじまりSIDE 佐柚


「佐柚~お前何にそんな悩んでんだよ?朝から」

慌ただしく新聞をたたみながら、宗介が言った。

あたしは、朝から、制服を着おえた状態で和室にぐでんと転がっている。

「どうしようかな」

宗介はリビングの方から、あたしが頭の上にかかげている書類を見た。

「退部届?やめんのか、バスケ」

宗介の声は、拍子抜けしたものだった。

「合気道にしぼろうと思って」


宗介が学生時代にやっていたということで、宗介はあたしに、7歳のころから合気道をやらせた。

中学生になってからは、外部で合気道を習いながら、学校ではバスケ部に入部して、両立に励んでいた。

でも、もう疲れた。

「いいんじゃねえの。印鑑押してやるから持ってこい」

宗介は電話台まで行き、印鑑を取り出す。
あたしに手招きした。

「でも、顧問にはよくしてもらったし、やめにくいっていうか…」

あたしは体を起こしたまま、立ち上がらなかった。

「じゃ続ければ?」

宗介は簡単に言った。
そんな簡単に決めれないっつうのに。
だから、迷ってるのに。そんなあたしを見て、宗介は言った。

「やりたいことを、やりたいようにやれ。いらないもんは切り捨てろ。それだって勇気だ。それは逃げとは言わねえんだよ。いらないもんを切り捨てるのは、逃げじゃなくて進歩だよ。いらないもん捨てられないで、いつまでもぶら下げてるままでいる方が、よっぽど逃げだ」

宗介の目が、マジだった。

あたしは退部届に目を落とす。

「軌道修正も大事なステップだろ?お前が自由に楽しんでいられれば、それで俺と梨沙への親孝行!」

宗介が満面の笑顔になった。
あたしはそれで、決めた。




あたしは宗介を尊敬していた。
梨沙が早くに病気で死んじゃって、うちは、6歳年上のさくらと、宗介と3人暮らしだった。
こんな風に宗介は、いつでもあたしたちを助けてくれる。
人として、父親として、あたしは宗介が大好きだった。



それなのに…、、
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