AL†CE!

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11月の冷たい風が、あたしに吹きつける。
和原中学校の屋上。

宗介が死んでから、4日経った。
今日初めて学校に出てきたけど、教室に入れる気はしなかった。
葬儀のあと、紗和から心配のメールがきてたけど、返信もしていなかった。


何もやる気がしない。
動ける元気もでない。

フェンスの上に立つ。
運動神経は、よく宗介に誉められたな。

高かった。


目を瞑る。


吸い込んだ空気は冷たくて、軽い気がした。



「危ないですよ!?」


急に、うしろから声がした。

びっくりしたけど、びっくりする気も起きなくて、無表情のまま目を開けて、振り返った。


男の子がいた。上履きの色が、2年生だった。

あたしは笑った。
何かがおかしいわけじゃない。
でも、笑った。

「あたし死ぬんだ。空に1番近い場所で、死んじゃうんだ」

…びっくりするかな。

黒い、肩ぐらいにそろえたボブが風になびく。
男の子は、じっとあたしを見つめてる。
動揺しないのかな。
ひとまずフェンスから降りた。

男の子に背を向けて、空を見上げる。
白い雲が、するする流れていく。

「あそこに宗介がいるの…」

宗介が、待ってるの。
だから邪魔しないで。


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