AL†CE!
これには大地が、
「はい」
と、反射的に返事をした。
戸を閉めて、男はたばこを取り出した。
ゴミを入れた青いバケツに腰掛ける。
「追っかけてきたのか。馬鹿だなぁ…」
功がエナメルを肩から下ろした。
大地も続く。
「やっぱり、いるんですね」
ふぅーっと煙が吐き出される。
「いるよ」
男の台詞に抑揚がつき、低くガラガラした声になった。
「あいつを訪ねてきた人間なんて、お前らが初めてだ」
男は、金色に光るライターを両手で弄んでいる。
「17歳をこの店で雇うのは、法律違反なんだよ」
黒い煙が宙をうねる。
「でもあいつは借金がある」
大地が、
え…と声を漏らした。
「多額債務…ってやつだな」
「それは…どうして…」
男は2人を睨みつけた。
「それはあいつに聞け」
男は立ち上がった。
ワックスで立ててある黒髪が、風になびく。
「学校でのあいつを頼むよ」
最後にそれだけ息のように吐いて、男はビルの中へ消えた。
「…まじか」