AL†CE!
Ⅲ.救済?
4限の始まりを告げるチャイムが鳴った。
佐柚は中庭のベンチに座っていた。
日陰で、冷たい風が時折吹くが、教室に入れる気分ではなかった。
今日は大嫌いな男が学校に来る。
どうにかして逃げなくては…。
「はい!」
突然、あたたかい缶が頬にあてられた。
佐柚は振り返る。
「あぁ真田!ありがと」
学ランを着た、背の高い青年が立っていた。
佐柚の赤い上履きとは違い、緑の上履きをはいていた。
「何してんの?」
青年は佐柚の隣に座った。
真田健太_
バスケ部の1年生で佐柚とは中学も同じなので、特別仲がよかった。
「めいそう」
「は?すっげぇ間違ってる気ィするけど」
「うるさいなぁいいの!」
「はいはい」
佐柚の2つに結んだ栗色の髪が、風になびく。
「…真田は茜ちゃんに迷惑かけたらダメだかんね」
「茜?なんだよ急に。どっちかっていうとお前が姉貴に迷惑かけてんじゃないの」
真田のその言葉に、佐柚はうつむいた。
そんな佐柚を気にした真田が、佐柚の顔をのぞきこもうとしたそのとき、
ガタンッ
ベンチが揺れた。
真田は佐柚に、ベンチに押し倒された。
「いらっしゃいませー。よろしくお願いしまぁす」
「…は?」
「今日はどちらの部位になさいますか?」
そう言いながら佐柚は真田にまたがった。
「乗りますよー」
両サイドに垂れた佐柚の髪が、真田の顔や首筋に触れる。
真田は顔を背けた。
「おい、有末!」
「……」
「…バイトか?」
真田はゆっくりと佐柚に視線を戻した。
佐柚は唇をかみしめたままだ。
「お前の?」
「……」
真田が力一杯上半身を起こした。
佐柚は、ベンチの上で、のびた真田の脚の上に正座する形になった。
すぐに真田に降ろされる。
「ふざっ…けんな、今すぐやめろ、携帯貸せ」