AL†CE!

「やめて!」
「ふざけんなよ、なんでお前がそんな…」

突然、はっとしたように真田が言葉を飲んだ。
「…借金か?」

佐柚は何も言わない。
ただ、地面を見つめていた。

「いくら?」
「…1」

真田は、ため息をついた。
左手で自分の額をさする。

「他のバイト探してやるから、そしたら俺もバイトするし、お前これはやめてくれ…」

佐柚が立ち上がった。
いつの間にか、佐柚よりも、真田の身長の方がはるか高くなっていた。

「真田には関係ないでしょ!迷惑かけられないから。いいから」

「有末!」

「これしかないの!最低な姉貴のせいでこれしかないの!」

真田は、歩き出した佐柚の腕を掴み、引き止める。

「…さくらさんと何があった」

佐柚はその質問には答えない。

「…マッサージするだけだから」

真田が佐柚の腕を掴む力を強くした。
痛みに、佐柚は目を伏せる。
前にもこんなことがあったなと、佐柚はふいに思った。

「大事だから言ってんだろ」
「…放して」

佐柚は真田を見ようとしない。
仕方なく、真田は佐柚の腕を放した。

するりと真田から抜け出した佐柚の腕は、だらりと体の横で垂れた。


もう片方の手で、受け取った缶スープを掲げて、佐柚は昇降口に消えた。
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