AL†CE!
「これはあんたの分」
佐柚はキャッチはしたが、麗沙につき返した。
「あたしは、働いてないです」
麗沙は金庫を閉じた。
「あんたにお小遣い」
「いりません」
「返すなら、営業妨害代増して返しな」
その言葉に、佐柚はため息をついて腕を引っ込めた。
「わかってるじゃないか。少しは足しになるだろ」
麗沙は微笑んだ。
そのあと麗沙は、男を使って大地と功の荷物を2階に持ってこさせた。
その間にタオルを2人に渡し、佐柚には薄いカーディガンをかけてくれた。
女はそんなに武器を見せびらかしてはいけないのだと、大胆にはだけた肩で言った。
大地と功は着替えを済ませ、3人は麗沙に付き添われて店を出た。
1階は、もういつも通りの風景に戻っていた。
「気をつけて帰んな。もう来るんじゃないよ」
「本当にお世話になりました」
大地は深く頭を下げた。
功も続く。
佐柚も、頭を下げた。
「功」
麗沙が言った。
「兄貴に、お前ももう雇ってやらないと伝えてくれ」
麗沙は笑っていた。
功はもう一度頭を下げる。
「御迷惑おかけしました」
「あんたは…」
麗沙は佐柚の頭に手をおいた。
「頑張んな」
佐柚はそのままで、聞いた。
「どうして…」
佐柚よりも背が高い麗沙は、少しかがんで、佐柚の耳元で囁いた。
「あんた綺麗だよ。惚れた」
答えてはもらえず、佐柚は舌打ちした。
そういう可愛くないところがあたしに似ていたから、と最後に言って、麗沙は店に消えた。
佐柚は腕時計をみる。
深夜0時をまわっていた。
大地と功は気が抜けてその場にしゃがみこんでしまった。
「あーっ殺されるかと思った」
功が叫んだ。
「麗沙さん何者だよ!」
大地も叫んだ。
「そいで、冷たかったー!」
佐柚がけらけら笑う。
「酔っ払い!」
大地は佐柚を見上げた。化粧と衣装のせいで、いつもよりさらに美しく色気づいた佐柚が、2人を見下ろした。
佐柚は何も言わない。
大地は真顔で謝った。
「…悪かった」
功も佐柚を見上げる。
ワインに酔って、鼻が赤かった。