AL†CE!
昇降口を入ると、大地は見覚えのある女子生徒と目があった。
「あ…」
向こうも大地を知っているようだ。
「“紗和”ちゃん?」
誰だっけかと記憶をたどっている大地のうしろから、功が声をかけた。
その名前を聞いて、あぁ、と大地も頭を軽く下げた。
「佐柚が、いつもお世話になってます」
紗和は笑顔でお辞儀した。
佐柚よりも身長は高いだろう。
他の女子生徒と比べでも、紗和は縦に長かった。
佐柚とは対照的に短い黒髪で、おとなしそうに見える。
初めて佐柚が3-Iの教室に来たときに、付き添っていた子だった。
「こちらこそ、有末がいつも迷惑かけて~」
大地がふざけて頭を下げると、
「本当ですよ~」
と、紗和は困ったような声を出した。
「うわ、そんなこと言って!」
功は紗和を指差していたずらっぽく笑う。
紗和は肩をすくめた。
大地は、スタイルのいい子だな、と思った。
もう一度小さく会釈して、紗和は階段を昇っていった。
大地と功も紗和に続いて、
他の生徒たちの波に逆らわずに、階段を昇った。