AL†CE!

「…!」

突然、声がした。

佐柚が運動靴をもって顔を上げると、ガラス張りの引き戸の前に、女子生徒が立っていた。

肩の高さで黒髪の毛先がはねている。
メガネをかけた小柄な子だった。

紗和は佐柚を見た。
佐柚は凍り付いている。

「ワンダーランドの方がしっくりきますよね」
女子生徒は微笑んだ。

「…店に来たの?」
佐柚は女子生徒を睨んだ。

「由梨子は何に手こずってるのかなーって思って。大丈夫、誰にも言いませんから」
抑揚のない小さな声が、佐柚をいらいらさせた。

「そりゃありがたい」
ぶっきらぼうに言う。

「金欲しさにそういう仕事に就く女の人って、そこら中にいますもんね」

佐柚は片方の眉を釣り上げた。

「女って汚くて卑怯。つくづく思います」


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