AL†CE!
「有末、なんかあって来たんじゃないの?」
大地が由梨子を払いのけながら言った。
「…別に」
佐柚は首を振る。
由梨子の笑顔が佐柚を不快にさせていた。
「功も中にいるぞ?」
佐柚はちらっと一瞬だけ教室の中を見た。
だがそれだけで、もう一度大地と由梨子に視線を戻す。
そしてひらひらと手を振った。
「…ばいばぁい」
「またねぇ有末ちゃん!」
佐柚の細い背中に元気に手を振る由梨子の横で、大地は首を傾けた。
「…なんだ?」
見慣れた佐柚の後ろ姿は、いつになく華奢で繊細に見えた。
見慣れない佐柚の髪型は、いつもより少しだけ、佐柚を大人っぽくさせている。
大地の目は、佐柚の姿をとらえて放さなかった。
1度も振り返らずにすたすた歩いていく。
そして、やがて階段に消えた。
由梨子はただ黙って、
そんな大地の横顔をみていた。