AL†CE!
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放課後
大地と功が昇降口を出ると、
ローファのつま先をとんとんしながら、
功が
「お、有末」
と言った。
見慣れないおだんごのせいで、
大地は気づけなかった。
白い首をのぞかせて、
佐柚は1人で歩いていた。
「有末、帰んのか~?」功が片手を伸ばして、佐柚の背中に手を振った。
見慣れた後ろ姿が振り返る。
声の主はわかっていたようだ。
「はい!先輩たちは、部活がんばって」
佐柚はいつもよりおとなしめな笑顔をみせた。
「な…」
大地が何か言おうとしているのに気がついたらしく、目をそらした。
そして小さくお辞儀をして、颯爽と歩いていった。
遠ざかっていく佐柚の背中は、
まるで知らない人のようだった。
「…なんだ、あいつ」
「ねぇ、今さらかしこまっちゃって」
大地は
佐柚が消え、他の生徒たちの流れるように吸い込まれていく校門を見据えた。
生徒たちの、がやがやとした声で、むしろ辺りは無音のように思われる。
人の波の中に、
こうして2人取り残されるのは、初めてではなかった。
『先輩たちは、部活がんばって』
「“先輩”ね…」
ひとりごとのように呟いた大地の背中を
功がぽんっと叩いた。