AL†CE!
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大地は目を丸くした。
思いがけない佐柚の登場に、驚きが隠せなかった。
「有末…」
かろうじて名前だけ呼ぶことができた。
佐柚も面食らったような表情で、
小さく頭を下げた。
「何があったんだよ」
心の中のわだかまりを、
少しずつ佐柚にぶつける。
「急に先輩とかつけやがって、どうしたんだよ」
佐柚はうつむいた。
見慣れていたはずの栗色の茶髪がなつかしかった。
「何もないです」
佐柚が顔をあげ、
はっきりした声で言った。
「俺たちに相談もなしかよ」
「仕事が、少し忙しいだけです」
大地の言葉にもひるまない。
「急いでるんで」
冷たくそう言うと、
無言で大地に近づき、
自販機で緑茶を1本
おつりをださずに買った。
ガコン
一瞬、
緑茶を取りだそうとした佐柚の手が止まった。
しかしやはり何も言わず、
ペットボトルを掴むと
挨拶もせずにすたすたと
昇降口へ消えた。
大地は1人取り残された。
目の前にいた美少女は、
大地の知っている有末佐柚ではなかった。