年下王子は意地悪王子
「―――あんたこそ、何しに来たんだ?」
低く冷たい、そしてどこか妖艶な雰囲気をまとった声。
あたしは背中を打ち付けたのも忘れ、ただその声に聞き惚れた。
何だろう…
引き寄せられる……
体の力がふわっと抜けてしまいそうになる、そんな感覚。
息をするのも忘れ、目の前のアメジスト色の瞳に魅入られた。
そんなあたしの耳に、くすっと小さな笑い声が聞こえ、それと同時に風に吹かれたカーテンが舞い―――。
部屋に差し込んだ西日が、“彼”を映し出した。
「“幽霊”にでも会いに来たのか?」
薄い唇が歪んだ笑みを浮かべながら、ゆっくりと言葉どおりに動く。
まるで好印象なんかを与えない、そんな笑み。