年下王子は意地悪王子

ある放課後






ガヤガヤとざわめく職員室の一角。


タバコの苦い臭いや、むせ返るようなコーヒーの香りが立ち込める中、あたし、立花琴音(タチバナ コトネ)はキョトンと目の前の人物を見つめていた。




「……えっ、なんて?」




なぜか担任に放課後、職員室に来るよう言われたあたし。


すっぽかしたいのは山々だったけど、そんな度胸なんて生憎持ち合わせていなくて。


最後の最後まで悩んで、結局職員室に来た。


……まではいいんだけど。



今、本とか図書室とか聞こえた気が…




「聞こえてたでしょう?」



ハァ…と深いため息をつかれる。


そして、ぐるりと椅子ごとあたしの方へ向き直る人物。




「…まぁ、いいです。今から図書室に行ってこの本を返してきてください」




柔和な笑みを浮かべるこの人こそがあたしの担任、藤木颯太郎(フジキ ソウタロウ)。
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