年下王子は意地悪王子

ココアと颯ちゃん





◇◇◇





「―――ハァ…」




本日何度目になるかもわからないため息をこぼす。


それによってまた憂鬱な気分がいっそう増すんだけど、どうしてもこぼさずにはいられなかった。


退屈な午前中の授業を二つ消化し、昼休みまでに残す授業はあとひとつ。


いつもだったら手放しで喜んでるのに、今日は刻々と近づく昼休みが嫌で仕方なかった。




『明日の昼休み、弁当を持って化学準備室に来いよ』




今朝方早く、寝ぼけながらとった電話の向こう側で、低い声で告げられた言葉。


思い出しただけで顔が引き攣る。




「…颯ちゃん、怒ってるのかなぁ」




昨日あのあと、颯ちゃんが眠ってしまったあたしを家まで送り届けてくれたみたい。


何となくは覚えているんだけど…


あたしを抱き上げたまま、お母さんと何か会話をしている颯ちゃんの声。


起きなきゃ…って思ったんだけど、颯ちゃんの腕に抱かれているのが心地好くて、そのまままた寝ちゃったんだ。
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