年下王子は意地悪王子
固く目をつぶり、ぴくりとも動かないあたしの頭を美波の手が優しく撫でる。
「全部じゃなくてもいいから、話してみなよ。ちょっとはスッキリするかもしれないよ?」
美波の手、あったかい…
思わず緩む頬に、ぽつぽつと昨日の出来事を話した。
――あの王子様のことは伏せて。
何となく…だけど、一瀬くんは自分のことを知られたくなかったように思えたから。
『俺がここにいることを知ってたのか?』
ほんと、何となくなんだけど。
あたしが話している間、美波はただ黙って耳を傾けてくれていて、それがとても心地好かった。
「……それでね、今日の朝、昼休みに化学準備室に来いっていう電話が来たの。どうしよ〜…颯ちゃん絶対怒ってるよぉ…」
顔を上げて、すがるように美波を見つめれば、思い切り鼻で笑われた。