年下王子は意地悪王子
「約束、だからね?」
「分かってるよ。ありがとね、琴音」
あたしの頭の上に大きくて温かい掌が乗せられる。
くしゃくしゃと優しく髪を乱し、スッと離れた。
「気をつけるんだよ。暗くなる前に帰りなさい」
笑いながら頷くと、颯ちゃんは満足そうに笑った。
そして、藤木先生!と呼ばれる声に首をひねり、すぐ行きます。と返す。
「颯ちゃん、頑張って」
「うん。じゃあ頼んだよ」
颯ちゃんはあたしの頬に指先を這わせ、柔らかく微笑み、優雅な動きで席を立った。
華奢なその背中に、頑張れとつぶやき、職員室を後にした。
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