最初最後彼氏!
「聞いた話なんだけど、母親は俺を産んで死んだんだって・・・。」

雄の声が弱っていくのを感じ、あたしは雄を離さないようにしっかり抱きしめる。雄もそれに応えるように強く抱きしめてくる。

「写真もあんまり残ってないらしくて、色んな表情も知らない・・・。顔は知ってるけどな・・・。」

雄は、お財布から一枚の写真を取りだした。

「これが・・・、俺の母さん・・・。」

あたしはその写真をじっくり見る。

すごい・・・。雄にそっくり・・・。

あっ、雄“に”そっくりなんじゃない・・・。雄“が”そっくりなんだ・・・。

「優しそうな・・・お母さんだね。」

本当に似ている。優しそうなところ、髪の色、そっくり・・・。

「だろ?俺も最初写真を見たときは『俺に似てる・・・!』って思った。」

雄は苦笑しながら言う。

顔を見なくても、雄の声で分かる。

「この場所は、俺の母さんの大事だった場所らしいんだ・・・。」

雄のお母さんの大事な場所・・・?

「ほら・・・、親父と初めて喧嘩したって言ったろ?実は、親父に連れてこられて、知ったんだ・・・。2人が初めて一緒に来た場所なんだって・・・。だから・・・、母さんがここにいる気がするから、俺は・・・勇気と元気をもらうんだ・・・。」

雄の声が震えてくるのが分かった。

あたしは少し雄から離れて顔を上げる。

顔を上げたとたん、雄に唇をふさがれた。

少し、雄の唇が濡れている・・・。

・・・っ!

口がこじ開けられ雄の舌が入ってくる。

少し乱暴だけど、優しくあたしの口内を動き回る。

今の雄の心を表しているようだった。

もう1分くらいたっただろうか・・・。

だんだん息が苦しくなってくる・・・。

雄はキスに夢中なのか、全然離してくれない。

さすがに限界なので、雄を何度か叩いてみた。

お互いの唇はゆっくり離れていく・・・。

そして雄はまたあたしを抱きしめる。


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