薔薇部屋
「ねぇ、私はこんなに元気よ」
独り言を窓の外に向かって、神様にでも問い掛けるように言う

「ねぇ、本当に病気なの?」
ついには、お父様の言葉さえも否定しようとしてしまう

「これ以上、かごの鳥ならば…いっそ…」
殺して…―最後のその言葉はどうしてか口に出せなかった

そのかわり、涙が流れた

遠野がいない一人の部屋
父親がいない一人ぼっちの部屋

「…―ねぇ、お母様」
涙はとめどなく溢れて来る「私もそちらに行っては駄目?」

二十歳になって初めて弱音を吐いた

ミキは強い子だった…―でも心は本当に、とてもとても弱かった

だから今、爆発してしまった…―子供から大人に成長しても、ミキはミキのままなのだ

我慢した
外に出て遊びたかった…―ユウジが大好きだから、大切な父親だから、迷惑をかけまいと、我慢した

そしてこれからもきっとそれは続いていく…―だから今だけは泣いた

大人になったミキが涙を流すのは、これが最初で最後…
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