薔薇部屋
あのパーティーから、いつしか二人は惹かれあい、暇のある日は一緒にいる…そんな日が続いていた…―まったく自分は毎日をどれだけ暇で持て余していたのだろう、なんてユウジ少し苦笑いをした

「あら、何か楽しいことでもあって?」

隣にいるユミが、ユウジの苦笑いに不思議そうに笑う…―そんなユミの笑顔がユウジにとっての幸せだった

「いや、幸せだな…と、思って、な」

…―幸せ過ぎて恐ろしいくらい、そんなことをおもいながら、ユウジはゆっくり溜め息をついた

「あら、こんなことで幸せ?花屋の娘と一緒にいることが?」

そう、ユミはお嬢様でもなんでもなかった
ただの花屋の娘…―パーティーに飾られていた全ての花を管理していた大きな花屋の娘

俺とは、ぜんぜん違う

「…?ユウジさん?」
「え、あぁ、悪い…」
「ふふ、こんなに頻繁に私に会っていては、お父様に叱られるんではなくて?」

そう、俺は大きな屋敷の息子なのだ…―いずれは父親の後継ぎをしなければならない、一人息子なのだ

「お父様は、ユミを気に入っているよ。パーティーの時も花の飾り方が素晴らしいと褒めていた」
「えぇ、何度も聞いているわ…本当に嬉しい」

ユミは顔を赤らめた…―薔薇のように綺麗に赤らめた

「ユミ…」

それは、まわりの花など霞んでしまうほど美しくて…―ユウジはいつも思っていた

ユミを必ず、生涯そばにおいておこう…と
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