薔薇部屋
「二十歳ね…」
「大人の仲間入りですね、お嬢様」
優しい声で「ケーキは晩餐の時に」と言いながら片付けを始める

そんな遠野を見詰めながら、大人の仲間入りをした自分の手を見詰めた…―何も変わっていない

「ねぇ、遠野さん」
「はい?」
先程ケーキが乗っていた場所に、朝食が用意される
「私、本当に二十歳になったの?」

不安そうに呟くミキに、遠野はそっとミキの手を握って優しく言うのだ
「焦らなくて良いのですよ?」
その言葉に、ミキは首を傾げる
「二十歳になったからって、そうすぐに何かが変わるわけではないのですから」

まるでミキの心を見透かしたような言い方に、ミキは一滴だけ、気付かれないように涙を流して、いつもの窓から外を見詰めた

「お嬢様、朝食の用意が整いました」

そして、きっと少しずつ変わるだろうと期待を込めて、いつもの朝食を口に運んだのだ
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