ダリア【SS】
There was nobody
満月の夜に、黒猫を見るのは不吉だという。
ただの迷信だろうと思ってみても、耳の奥の警鐘は消えない。
その黒猫というのが、死骸でも有効だとしたら。
「……可哀想ね」
地面に張り付いた猫の死骸を見て、恋人の瞳子(とうこ)が口を開いた。
「猫は……すぐ飛び出すからね」
きっと車に轢かれたのだ、と心の中で推測する。