遺伝子【短編】
遺伝子
俺の心臓は、はち切れんばかりにドクドクと波打っていた。
「ハァハァハァ…」
体がゾクゾクと震え出すのを抑えながら、家から数分の河原で俺は手を洗っていた。
あの感じ……
なんとも言えない程の悦楽。
まさに悦。
あの、驚きながら怯える目。
懇願した顔
皮を切りさく感触
噴き出す血しぶき
「たまらないな」
つい口から漏れてしまう本音。
いつからだろう……
これが快楽になったのは。
記憶には無いが、遠い昔。
そう、ずっとずっと前から殺すノウハウを知っていたし、そしてまた快楽も知っていた。
誰に教えてもらう訳でもなく、自然と身についていた感じかな。
まるで、習慣の様に……
彼女を殺すのは、本当に簡単だった。
ターゲットは、隣のアパートの一階に住む女子大生。
家族にバレない様に窓から外に出て、いつも開いているトイレの窓から侵入した。
もちろん、下調べ済み。
ヘマはしない。
助けを求め様と声をあげようとするが、そんな隙は与えさせないのが俺流。
彼女の家に有る包丁で、喉元をひと突きしてやった。
おかげで楽に死ねただろう?
それだけでも感謝して貰いたい位だよ。