遺伝子【短編】
俺を見た瞬間、驚いた様に2人の男は顔を見合わせたんだ。
天使の笑顔が効いたか?
お母さんは、心配そうに2人を見ながら
「この子が、どうかしました?」
と尋ねると、若い男が簡単に口を開いた。
「あっ、いやね……指紋が見つかったから…まぁ、大丈夫そうで…」
そこまで言うと、年を取った男にど突かれていた。
コントみたいなやり取りに、俺は吹き出しそうになるのを寸前で堪えた。
だから、日本の警察官はバカばっかりなんだよ。
もちろん、心で思いながら顔は天使の笑顔で居るけどね。
「捜査のご協力、ありがとうございました」
軽く敬礼をする2人に
「早く犯人を見つけて下さいね」
と言ったお母さん。
笑顔で頷いた2人は早々に玄関から立ち去り、家の反対隣の家に向かって歩き出した。
―――バタン
玄関のドアが閉まる。
鍵を締めたお母さんは後ろを振り返り、ポカンとしている俺を見た。
さっきとはうって変わって、真剣な眼差しだった。