堕天使の宿
変な夢を見た。
どこか労務者風の大男が雪駄をはいてにこやかな顔をしている。
その隣にうだつの上がらない中年サラリーマンが、これまたにこやかな顔をしている。
すすけた作務衣を着た宿の主も同様に、にこやかな顔をしている。
三人は互いに手をつなぎ、焚き火の周りをくるくると踊りながら回っていた。
それを眺めていた私は、いつの間にか焚き火と入れ替わっていて、三人に囲まれながら私もつられて微笑んでいる。
微妙に、奇妙に、その輪は調和が保たれていた。穏やかな光景だ。
突然つながれていた手が離れ、それぞれが私に背を向けた。
そして、背中にはまるで天使のような羽が生えていた。
やがて、空の上から光がさしたかと思うと、一人ずつやにわに振り返り、羽を羽ばたかせて飛んでいった。
ふと気づくと、荒涼たる大地に冷たい風が吹いていて、さっき飛んでいったはずの作務衣を着た宿の主だけが屈んで、七輪で火を起こしていた。
背中には、何故か片方の羽しかなく、主の顔はどこか悲しそうだった。
そして突然、いい匂いがした。
ん?匂い?夢に匂いなんてあるのかな?
ノスタルジックな光景が急に現実的疑問にすり替わったところで、目が醒めた。
寝ぼけながら窓の外を眺めると、その疑問は氷解した。
魚のみりん干しか何かが、良いように炙られたようないい匂いだった。
案の定、宿の庭で魚のみりん干しが程よく焼けていた。
焼いているのは宿の主。夢で見た格好と寸分たがわぬスタイルで、その表情もどこか悲しそうだった。
お腹が鳴り、朝が来たことが、ようやく理解できた。
どこか労務者風の大男が雪駄をはいてにこやかな顔をしている。
その隣にうだつの上がらない中年サラリーマンが、これまたにこやかな顔をしている。
すすけた作務衣を着た宿の主も同様に、にこやかな顔をしている。
三人は互いに手をつなぎ、焚き火の周りをくるくると踊りながら回っていた。
それを眺めていた私は、いつの間にか焚き火と入れ替わっていて、三人に囲まれながら私もつられて微笑んでいる。
微妙に、奇妙に、その輪は調和が保たれていた。穏やかな光景だ。
突然つながれていた手が離れ、それぞれが私に背を向けた。
そして、背中にはまるで天使のような羽が生えていた。
やがて、空の上から光がさしたかと思うと、一人ずつやにわに振り返り、羽を羽ばたかせて飛んでいった。
ふと気づくと、荒涼たる大地に冷たい風が吹いていて、さっき飛んでいったはずの作務衣を着た宿の主だけが屈んで、七輪で火を起こしていた。
背中には、何故か片方の羽しかなく、主の顔はどこか悲しそうだった。
そして突然、いい匂いがした。
ん?匂い?夢に匂いなんてあるのかな?
ノスタルジックな光景が急に現実的疑問にすり替わったところで、目が醒めた。
寝ぼけながら窓の外を眺めると、その疑問は氷解した。
魚のみりん干しか何かが、良いように炙られたようないい匂いだった。
案の定、宿の庭で魚のみりん干しが程よく焼けていた。
焼いているのは宿の主。夢で見た格好と寸分たがわぬスタイルで、その表情もどこか悲しそうだった。
お腹が鳴り、朝が来たことが、ようやく理解できた。