堕天使の宿
 もちろんお金に余裕が無いから、リストの中で実現できそうなランクの更にすぐに実行できるものを選びはしたのだが。
  <心がほっとする、ランプの宿で癒しのひと時を・・・>
 インターネットで調べたその場所は、私の今の心の琴線に共鳴して、すぐに私をして予約を入れさしめた。
 私にとっては、聖なる儀式のような、神聖且つ厳粛なる旅なのだ。誰にも邪魔されたくは無かった。

 そんなことを思い返しているうちに、急に車両が停止した。
 何だろう?車内アナウンスが流れた。

 「この先、架線の故障のため不通となっています。お客様には大変ご迷惑をおかけいたしておりますが、次の「星平駅」にて乗り合いバスによります代替輸送を行いますので、悪しからずご降車願います」
 ちょ、ちょっと待ってよ。私は終着駅まで行きたいんだけど・・・。
 変な予感はあったんだ。ええい、しょうがない。代替輸送があるのならそれで行くしかないか。
 やがて電車は「星平駅」に到着した。
 腹をくくって、私が愛用のかばんを持って立ち上がったとき、さっきの2人も立ち上がった。
 ぎごちなくドアの前に立って開くのを待つ。その後ろに「雪駄」氏が立ち、「憔悴」氏が続く。
 思わず息を呑んだ。「雪駄」氏は存外に大男だったからだ。
 駅のホームを降りたのは、なんのことはない。私と「雪駄」氏と「憔悴」氏の3人だけだった。
 
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