Secret*Hearts

望むのなら、できることなら、あたしが持ってるもの、全てあげたっていいのに。あたしの悩みも葛藤も、全部引き連れていってくれたらいいのに。

……―――何も、知らないくせに。

行き場の無い思いが、ただ募っていく。

憐の顔が、ぼんやりと浮かんでは消えた。
つい数分前に別れたばかりなのに、無性に憐に会いたくなる。


憐――…


憐はあたしを、どう想っているのだろう。

今さらな疑念が、あたしを満たしていく。





早く、大人になりたかった。

というか、早く自立したかった。

煩わしくて、浅井家であることにこだわって束縛するパパとママの元から、
今すぐにでも飛び出したかった。


でもそれができなかったのは

あたしが子供だったから。

結局パパとママのすねをかじってしか、
生きていけないのはわかっていたから。





無駄に広い部屋の片隅、ドレッサーに向かって普段はしない化粧品を手に取る。

化粧はあまり好きではないし、派手な化粧なんてしたらママに叱られるからしないけど、気持ちだけでも大人になりたくて、背伸びをするようにつけた長いマスカラを眺めた。
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