Secret*Hearts
望むのなら、できることなら、あたしが持ってるもの、全てあげたっていいのに。あたしの悩みも葛藤も、全部引き連れていってくれたらいいのに。
……―――何も、知らないくせに。
行き場の無い思いが、ただ募っていく。
憐の顔が、ぼんやりと浮かんでは消えた。
つい数分前に別れたばかりなのに、無性に憐に会いたくなる。
憐――…
憐はあたしを、どう想っているのだろう。
今さらな疑念が、あたしを満たしていく。
*
早く、大人になりたかった。
というか、早く自立したかった。
煩わしくて、浅井家であることにこだわって束縛するパパとママの元から、
今すぐにでも飛び出したかった。
でもそれができなかったのは
あたしが子供だったから。
結局パパとママのすねをかじってしか、
生きていけないのはわかっていたから。
*
無駄に広い部屋の片隅、ドレッサーに向かって普段はしない化粧品を手に取る。
化粧はあまり好きではないし、派手な化粧なんてしたらママに叱られるからしないけど、気持ちだけでも大人になりたくて、背伸びをするようにつけた長いマスカラを眺めた。