Secret*Hearts
…―――似合わない。
そう思って自嘲的な笑みが零れる。
これから会いに行く憐のリアクションを想像して、今度は苦笑とは違った笑みが零れた。
静かに、パパとママにばれないよう、無駄に広い家を抜け出す。時刻はまだ午後10時をまわったばかりだけど、この時間ならパパやママがあたしの部屋に来ることはないはず。
いつも抜け出すときに使う、使用人用の裏門をくぐって敷地を出た外の世界、待ち合わせの公園まで夜道を駆け抜けた。
*
憐が待ち合わせに遅れたことは、未だかつて無い。
今だって、ほら。
「……化粧なんかして、めずらしい。」
街頭の下、ひとりベンチに座っていた憐は、あたしの顔を見るなりそう呟いた。
「そんなことはいいのよ。…待った?」
「待ってないよ。というより、とりあえず座れば?」
相変わらず優しい笑顔に見つめられ、促されるままに憐の横へと腰を下ろす。
6月も中旬だって言うのに、夜の風は少しだけ冷たかった。