Secret*Hearts

…―――似合わない。

そう思って自嘲的な笑みが零れる。
これから会いに行く憐のリアクションを想像して、今度は苦笑とは違った笑みが零れた。

静かに、パパとママにばれないよう、無駄に広い家を抜け出す。時刻はまだ午後10時をまわったばかりだけど、この時間ならパパやママがあたしの部屋に来ることはないはず。

いつも抜け出すときに使う、使用人用の裏門をくぐって敷地を出た外の世界、待ち合わせの公園まで夜道を駆け抜けた。





憐が待ち合わせに遅れたことは、未だかつて無い。
今だって、ほら。


「……化粧なんかして、めずらしい。」


街頭の下、ひとりベンチに座っていた憐は、あたしの顔を見るなりそう呟いた。


「そんなことはいいのよ。…待った?」

「待ってないよ。というより、とりあえず座れば?」


相変わらず優しい笑顔に見つめられ、促されるままに憐の横へと腰を下ろす。
6月も中旬だって言うのに、夜の風は少しだけ冷たかった。

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