Secret*Hearts
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「ねぇ、浅井さん。ちょっといい?」
帰りのHR終了後、憐に手を振って教室を出たあたしの背中に投げかけられた声。
反射的に振り返れば、そこにいたのはクラスメイトのひとりだった。
…―――あぁ、めずらしい。
クラスの女子から、あたしに話しかけてくるなんて。
「いいわよ。」
そう答えると、彼女、佐々木恵はにこりと笑ってあたしの横に並んだ。
ゆっくりと歩き出すと、佐々木さんはおもむろに話し出す。
「私達が同じクラスになって、もう2ヶ月になるね。」
……何を言いたいのだろう、彼女は。
毎年クラス替えのあるこの高校、確かに佐々木さんとは今年初めて同じクラスになったけど。
「浅井さんって、何だか住む世界が違う気がして、今まではなかなか話しかけにくかったんだけど。」
「…何が言いたいの?」
「ううん。同じクラスになって、そんなにお堅い人じゃないんじゃないかなって。」
無邪気に笑う佐々木さんに視線を向けても、彼女は前方に視線を向けるだけ。
真意を読み取ることができなくて、そのまま彼女の言葉に耳を傾けた。