水の怪
「知らない……。怪談か何か?」

「そうそう!海の底にいる両足のない女の子で、海水浴をしている人の綺麗な足を見つけたらもぎ取っちゃうんだって……」

「ふーん……」


 怪談なんて、興味ない。ましてや、泳げない私にはとても関係のない怪談。

 軽く聞き流していると、店員さんがフルーツ・オレを2つ持ってきた。


「こちら、注文されたフルーツ・オレになります。それでは」


 コトン、と目の前に置かれたフルーツ・オレにささっているストローをくわえながら、私は重い口を静かに開く。


「亮。実は私ね……泳げないんだ」

「え?」

「何回練習しても上達しなくて、……だから、私といても楽しくないから、そこらへんにいる可愛い女の子に声掛けて、楽しんできたら……?」

「……いやだ」

「え?」

「俺は、友香と一緒にいたいの。……泳ぎの練習、俺が教えてやるからさ」

「や!でも、本当に練習しても上達しなかったし……やるだけ無駄なんじゃないかなぁ?」

「そんなことない!ほらっ、行くぞ!」


 グイッと腕を引かれて、お会計を払ってから海の家から出る私達。

 まだフルーツ・オレ、半分しか飲んでないのに……じゃなくて!え?私が亮と泳ぎの練習?!
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