水の怪

３ [風呂]

　彼氏が出来た。これで２人目の彼氏。名前は隼人（はやと）。あの日以来、私なんかに彼氏が出来るとは思わなかったから、嬉しい。

　――そこまでノートに書いて、動かしていた筆を止める。


（“嬉しい”……ううん、“とても嬉しい”に書き換えよ）


　消しゴムで“嬉しい”を消し、“とても嬉しい”と表記し直したのは、大学生の美也（みや）・２０歳。

　隼人という同じ大学に通う男性に告白され、付き合うことになった美也だったが、その出来事を今日記に記していた。


（私にまさか２人目の彼氏ができるなんて……思っても見なかったよ）


　美也は高校生の時、要（かなめ）という同級生の彼氏がいたのだが、ひどい束縛と重すぎる愛のせいで別れてしまっていた。

　それから顔を合わせることも連絡をとることもなく、何事もない日々を送っていたのだが……。

　それは、隼人と付き合いだしてすぐに起こり始めた。