水の怪
「どうした?早く行くぞ?」

「えっ、あ、うん!」


 亮に泳げないと云ったら、他のみんなのように笑うんだろうな……。


●●●


 海の家につき、案内されたテーブルに腰掛ける。

 周りのみんながクスクスと笑っているのは、きっと私がブスだからだ。ブスな私が、かっこいい亮といるから……。


「友香?どうかした?」

「……亮、ごめんね?私なんかと、お似合いなカップルだとか周りに云われちゃって……」

「え?」

「えっ?」

「やっ、……なんでもない。っていうかぶっちゃけ……友香と海に来れて良かったーなんて」


 私から目をそらして遠慮がちにそう云う亮の顔が赤いのは……気のせい?


「亮、それってどういう……」

「ご注文はお決まりになりましたでしょうか?」


 運が良いのか悪いのか、店員さんがやってきた。


「あっ、俺フルーツ・オレ」

「じゃっじゃあ私もそれで……」

「かしこまりました」


 ぺこりと頭をさげ、また違う人の注文を聞きに行く店員さんの後ろ姿を見つめていたら、亮が思い出したかのように云った。


「なぁ、知ってる?『海の子みぃちゃん』の話」
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