二人のおうち
 

「沙帆!おいっ」
 

 
洋太はばたんと風呂場のドアを開けた。
 

 
「おい!沙帆大丈夫か」
 

 
案の定沙帆からの返答はなく、洋太はやむを得ずバスタオルを引っ掴み、浴槽にぐたりとしている沙帆を抱き上げた。
 

沙帆、すまない。
見るつもりはないのだけど。
洋太はバスタオルで沙帆を包み、そのまま走って沙帆の部屋へと駆け込んだ。
 

 
「沙帆っ、沙帆」
 

 
バスタオルに包んだ沙帆をベッドへと寝かせると、洋太はバスタオルももう一枚持ってきて沙帆の火照った体を丁寧に拭いてゆく。
どうしたものかと洋太は思う。
 

目のやり場に困ってしまう。
沙帆は起きないしどうしよう、洋太は俯いた。
 

 
「沙帆、おい、起きろ」
 

 
ぺちぺちと沙帆の頬を手の平で叩く。すると、沙帆は気が付いたようだ。
 

 
「洋太さん……」
 

「ああ、良かった、気が付いて」
 

「?」
 

 
沙帆は不思議そうに洋太を見上げている。
 

 
「あのさ」
 

「?」
 

 
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