二人のおうち
 

「おい、おーい」
 

 
こいつ、起きやしない。
洋太は隣りで眠る沙帆を起こそうと、沙帆の体を揺すっていた。
 

目が覚めて、洋太は驚いたのだ。
いつもの朝と違う状況に、その寝惚けた頭はついていかなかったわけだ。
今自分の目の前に、すやすやと無防備に眠る幼げな少女がいる。
 

ああ、沙帆だ。そういえば、と洋太は昨夜あった出来事をようやく思い出す。
 

俺はゆっくりと荷物を片付けようとは言ったが、これほど朝、ゆっくりしようとは考えていなかったぞ。
 

時計の針は午前11時をさしていた。
洋太は溜め息をついた。
 

 
「こら沙帆、もう11時だぞ」
 

「んーっ……」
 

 
洋太が至近距離で言うと、眠っていた沙帆の目がぱちりと開いた。沙帆はぱちぱちと瞬きをしながら、洋太の顔をじっと見ている。
こちらも寝惚けた状態のようだ。
 

 
「洋ちゃんだ」
 

「……そうだね」
 

 
はははと洋太の乾いた笑いが響いた。
 

 
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