二人のおうち
購入した家具が届く夕方までは、洗面所周りや台所周りの日用品を収納した。
キッチンは沙帆が使いやすいように、沙帆の希望のまま洋太が鍋やフライパンを収めていく。
大まかな物が片付き、潰した段ボールがまとめられてゆく。洋太が紐で段ボールを束ね終えた頃、チャイムが鳴った。
「来た?」
「ああ、出るよ」
洋太について沙帆が出て来る。
ドアを開けると、間もなく部屋に宅配サービスの宅配員が二名入ってきた。
「お世話になります」
「どこに運びましょうか?」
てきぱきと手際良く配置されてゆく家具。三十分と言わずして、宅配員は帰っていった。
「これで部屋が片付くね」
「ああ」
そうしていると午後六時を過ぎていた。
家具を組み立てる洋太と別に、沙帆は夕食の準備をすることにした。
「今日はシチューにするね」
「ああ」
包丁のまな板を叩く小粋な音が響く。
この部屋が洋太の癒しになるのに、それ程時間はかからなかった。